平成20年度 近畿地域放射線技師会学術研修会 報告
(社)奈良県放射線技師会 理事(学術担当) 水野 吉将
 平成21年2月15日(日)、平成20年度近畿地域放射線技師会学術研修会が奈良県社会福祉総合センターにて開催されました。今回は奈良県が担当し、開催テーマを「国際交流・世界と未来への架け橋」として、近畿2府4県がそれぞれ協力して行いました。また、一般の聴講者向けに公開講演会を企画して、同時開催としました。

 当日は天候に恵まれ、この季節にしては穏やかな暖かい一日となり、大変多くの会員の皆様にご参加していただきました。そして、ランチョンセミナーは立ち見のでるほどで、そのあとの公開講演会も一般聴講者だけで196名となり、どちらも大盛況のなか行われました。学術研修会の参加会員者数は192名、そのうち県外から116名もの参加があり、大変有意義なものになったのではないかと思います。その内容についての要旨をご報告します。

【学術研修会プログラム】
開催テーマ
「国際交流・世界と未来への架け橋」

●特別講演
 「国際医療協力と診療放射線技師」
 〜四川大地震などの災害医療活動と国際医療技術支援活動を通して〜
   国立国際医療センター戸山病院 藤本 幸宏

●(社)日本放射線技師会会長講演
 「これからの日本放射線技師会」
 〜国際認定制度の意義、国際ライセンスの問題点等を含めて〜
 (社)日本放射線技師会 会長 北村 善明

●ランチョンセミナー
 「320列エリアディテクタCTAquilion/ONEのここだけの話」
 (技術と臨床、そしてよもやま話)
 東芝メディカルシステムズ株式会社 宮谷美行 

 「ネットワークの現状と展望について」
 富士フイルムメディカル株式会社  岡 律朗

●公開講演会
 「認知症」予防から診断と治療まで
 〜さっきのことは覚えていますか〜
 公立学校法人奈良県立医科大学 
 精神医学講座 教授 岸本 年史先生

●シンポジウム「実践・国際交流」
 〜私たちが出来ること〜
 座 長   
   水野 吉将(奈良県放射線技師会)
   渡辺 恵美(奈良県放射線技師会)
 シンポジスト 
   中江 保夫(兵庫県放射線技師会)
   原口 隆志(京都府放射線技師会)
   川村 佳生(和歌山県放射線技師会)
   門前  一(滋賀県放射線技師会)
   山口  実(大阪府放射線技師会)

写 真

特別講演
 
  「国際医療協力と診療放射線技師」〜四川大地震などの災害医療活動と国際医療技術支援活動を通して〜と題して、診療放射線技師として、国際協力活動の第一人者でもある国立国際医療センター戸山病院の藤本幸宏さんに四川大地震などの災害医療活動と国際医療技術支援活動などの経験をもとに、現在、日本での海外に向けての医療技術支援、食料援助、国際緊急援助などの国際協力活動の現状について講演していただきました。

 その内容は「国際医療協力」といえば、医師・看護師、医学分野における研究者の活動のように感じてしまいがちですが、実際、医療は多くの専門技術者の技術によって支えられていて、全世界で活躍されている医療技術者のなかには専門技術を十分習得されたコメディカルなどの様々な職域の方々によって支えられていると述べられました。

 また、海外医療技術協力で検査、治療、薬剤、看護などの臨床的分野と病気そのものの解明に関する研究が行われ、例えば、鳥インフルエンザやSARS、HIVなどの例をあげて、国際的な協力について述べられていました。
    
 そして、このような地域では収容施設内でのX線検査は必須となるのだが、残念ながら診療放射線技師の協力は皆無に等しい状況だそうです。しかし、途上国の結核対策協力では診療放射線技師が参加しX線検査の質向上に向けて活躍されているそうで、国際緊急医療援助や医療技術者育成協力でも診療放射線技師が参加していると報告されていました。

 世界では放射線技師制度が無く技術教育も確立していない地域や設備そのものが導入されていない地域があり、そのなかで緊急援助隊医療チームや医療技術者育成プロジェクトに参加した経験を踏まえながら、「国際医療協力」についての考えを述べられていました。

(社)日本放射線技師会会長講演

 「これからの日本放射線技師会」〜国際認定制度の意義、国際ライセンスの問題点等を含めて〜ということで、北村善明会長に講演していただきました。

 その内容は、昨今の医療情勢、経済情勢の不確かな時代のなかで、「診療放射線技師」の立場をいかに確立し、「国民から必要とされる職業へ」を実現させるための本会の施策について、現在の、診療放射線技師の取り巻く環境を説明し、国際認定制度や国際ライセンスの問題点も含めて本会が取り組んでいる生涯学習事業について解説されました。

 また、生涯学習に関連する主なものとして、政府における規制改革の推進、がん対策基本法の成立、医療法の改正、広告規制の緩和、Ai利用の動き、診療報酬改定への対応でした。

 そして、診療放射線技師を取り巻く環境に対応したJARTの主な取り組みとして、大学・大学院による放射線技師養成教育の確立について、養成教育のカリキュラムの見直しと不足科目への対応について、医療従事者の資質確保のための免許更新に関する対応について、広告規制の緩和への対応について、免許の国際化への対応についての解説がありました。最後に診療放射線技師が「国民から必要とされる職業へ」の実現のためには、診療放射線技師法の改正が必要であり、今後の取り組みについて述べられました。
公開講演会

「認知症」予防から診断と治療まで
〜さっきのことは覚えていますか〜

 今回、公開講演会として、一般聴講者を対象に、公立学校法人奈良県立医科大学、精神医学講座教授の岸本年史先生に認知症に対する予防、診断と治療まで、認知症の臨床の一連の流れをお話していただきました。

 その内容は認知症の経過は、従来発症から死亡まで5,6年から10年余りだと言われてきました。ところが近年、認知症に関する社会的な認識の高まりの結果、診断の時期が早まり、介護の技術の向上もあり、初診から死亡まで10年以上を経過する患者さんが多くなってきている、そのため早期の診断と治療とリハビリテーションが大切になると解説されていました。

 そして、認知症の患者さんや家族が、記憶障害を訴えて病院を受診するときには、その時点よりも何年も前から、うつ病と間違われるような意欲の低下がみられたり、家事に支障を認めることが少なくなく、認知症の早期診断・治療の重要性には@現在できる薬物治療で多少とも進行を遅らせることができる。A理論的には、アミロイドワクチンなどの将来の新規の治療法も早期ほど有効である。B早期なら成年後見制度の利用も含めた将来の設計もできる。の3点あると述べられていました。また、認知症の代表的なものとしてアルツハイマー病があり、その前段階の軽度認知障害の段階、つまり健常とも認知症ともいえないグレーゾーンにある段階から、運動や食生活、知的活動を行うことが予防や進行を遅らせることになること、それとアルツハイマー病の薬も1年間は進行を遅らせることが出来ると解説されていました。
認知症の診断は、記憶障害のほかに生活能力の低下があるかどうか、たとえば、近所の店で買い物をして支払いができるか、バスや電車を利用して外出ができるか、料理が自力でどのくらいできるかなどの社会・家庭生活の営みについての情報が大切で、MRI、RIなどの脳の画像検査なども診断の補助的な検査として有用であると述べられていました。

 最後に、早期診断後に大切なことは、認知リハビリテーションであるが、認知症においては、患者さんの機能が回復したり、障害の進行は遅らせることはできても止めることはできず、患者さんの実際上の不都合について、ここに解決策を見出すことと、患者さんは、能力の低下に直面して困惑したり不機嫌や抑うつ的になりますが、それに対する心理的なサポートと本人のやる気を出させる工夫が肝心であるとのべられていました。大変たくさんの一般聴講者と会員の皆さんの参加で大盛況のなかでの講演でした。
シンポジウム

「実践・国際交流」
〜私たちが出来ること〜

  今回は「実践・国際交流 〜私たちが出来ること〜」で各府県技師会シンポジストから、施設あるいは個人で国際援助、国際協力にどのように関わったのか、国際交流の入口、つまり入門的なお話を自分の体験をもとに解説していただきました。その内容は、南米チリでの胃集検車による現地での活動について、フィリピンでの貧民地区での支援活動について、インドネシア、スリランカなど災害援助の管理要員としての赤十字活動について、ベトナムでのJICA草の根事業について、JICA集団研修の研修施設としての活動についてなどいろいろな現地での活動での苦労談、問題点、やりがい、達成感などでした。このような国際活動をするには、自分の職場の協力、経済面、組織力など必要不可欠であり、そのために広域でのネットワークが必要となると痛感しました。そこで、メーリングリストの構築を行うということになりました。興味のある会員の方はどんどん参加してみてください。メーリングリストへのアクセス方法を下記に示します。

1.国際保健医療と診療放射線技師のURL
 http://groups.yahoo.co.jp/group/international_rad_tech/
2.直接参加を希望される方は
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